Outlineを決める

Themeが絞れてある程度先行研究もつかめたら、自分の卒業論文のOutline(概要)を書きましょう。
どのような論点があり、どのような方法でどのような資料を使い、どのような手順で論じるのかを文章化してみましょう。
その際、そのthemeについてはどのような研究がされているか、先行研究をおさえます。
そのうえで、自分はそこにどのような新しい論点を付け加えようとしているのか、自分の論文の意義を明らかにしましょう。
わかっている限りで言葉の定義についても述べましょう。
必要な事項は以下のとおりです。

1. 研究タイトル

2. 研究のtheme 具体的なtheme紹介 (e.g. 〜について考える)

3. 研究の背景
どのような動機でこのthemeに興味や関心を抱いたのか、この問題はなぜ研究すべきなのか、その重要性を明らかにします

4. 研究の目的
このthemeを考えることで何を明らかにするのか
(e.g.〜について〜の視点から考えることで〜が〜であることを明らかにする)
このthemeを考えることで見えてくるものは何かを報告します。
つまりthemeよりもう一次元高い、より広い視野で見えてくるものを言います。
例えば「『ハック・フィン』におけるハックの良心の葛藤を考えることで、社会道徳と個人の倫理との相克を考察する。」などです。

5. 研究対象の説明
研究対象の説明
自分のthemeに沿って、自分が研究対象としている作品(=1次資料)や事象を自分の言葉で説明します
複数の資料を扱う場合は出典を明記します

6. 主な論点
themeについて議論を展開するにあたり、どのような論点が考えられるか列挙します。
重要と思われる論点、またそれに含まれるより小さな論点を階層化して考えます。
例えば、『グレート・ギャツビー』における女性主人公デイジーの制約について考えるならば、以下のような論点が考えられます。

theme: デイジーの制約

  • デイジーの経済観念
    1. デイジーの暮らしぶり
    2. 1920年代ニューヨークの価値観
    3. ニックが見る東部と西部
    4. トムとギャツビーの社会/経済的地位
  • デイジーと1920年代のジェンダー・イデオロギー
    1. デイジーとトムの夫婦間のジェンダー・バランス
    2. デイジーとギャツビーの関係性とジェンダー
    3. 1920年代の女性ジェンダー
    4. 上流階級の社会通念とジェンダーetc. etc.

7. 先行研究の概要 先行研究の概要とその問題点
先行研究において自分の考えたいthemeについて、そして上記の論点についてこれまでどのような議論がされてきたかをまとめます。そのうえで、その議論が有効か否か、なにか不足点はないかを検証します。
これは自分のオリジナリティを確認するために必須の作業です。

それぞれの先行研究に対して以下の項目を記します
i 先行研究の書誌情報
(e.g. 亀井俊介『ハックルベリー・フィンのアメリカ』南雲堂、1998年。)
ii  自分のthemeおよび論点に沿った見出しをつくる
(e.g.「ハックと自由」「ハックと自然」etc.)
iii 上記見出しに沿った先行研究のまとめ
(e.g.「ハックと自由」について亀井は何を言っているかをまとめます。先行研究からの引用を含め、その際はページ数を明記します。)
iv 先行研究についての自身のコメント
(e.g. 亀井の議論は有効か、なにか補うべき点はあるか、など。)
これを読了した有効な先行研究すべてについて記しておきます
この作業は自らの研究の意義、オリジナリティを際立たせるために重要です

8. 研究の方法
どのような資料を使うのか、どのような方法で研究するのか
themeを探求し上記論点を考察する為に何をリサーチすればよいのか、その手法を考えます。
これがのちの論文構成、skeletonにつながります。

例えば「『エイジ・オブ・イノセンス』のアーチャーにおける二面性を著者ウォートンの自己投影して考える」というthemeならば、論点としては アーチャーの保守性、アーチャーの革新性が考えられます。
その際の方法論としては、ウォートンの伝記、ウォートンの自伝/回想録を読んで、ウォートンの二面性を明確にし、アーチャーのそれと比較検証するなどが考えられます。

ここでは論点を参照しつつ、具体的な見出しをつけて以下の作業を進めてください。

8-i  themeそして論点が一次文献にどのように現れているかを精査します
e.g. 『エイジ・オブ・イノセンス』のアーチャーの二面性、
すなわち保守的な面、革新的な面が表出している場面、言動、会話を拾い上げる。
→研究方法が確定できれば実際に自分でthemeにまつわる見出しをいくつか挙げ、それらに関連する箇所をすべて書き出す
その際、引用箇所のページ数を必ず明記する

8-ii  themeそして論点についてどのような二次文献の情報や議論を参照すべきかを考える
e.g. ii  ウォートンの伝記を読み、保守的な面、革新的な面が表出しているところに注目する。そのうえで、一次文献のアーチャーの保守性、革新性と比較検証する。
→研究方法が確定できれば実際に二次文献における関連箇所を列挙する。

このとき上記7の成果を転用できるところはそうしてください。
(7では、二次文献を自分の言葉でまとめる、必要な箇所を書き抜く、さらにそれが自分のthemeにどのように有効か、あるいはなにが補われるべきかを記しておく、という作業をして頂いています。

「→」以下はリサーチを進めるなかで常時拡充していきます。

9. Bibliography (参考文献リスト)

このOutlineが洗練されてやがて論文の構成、内容が決まっていきます。
卒論の序章はOutlineが洗練され、凝縮されたものです。
『岡田山論集』に掲載されている先輩方の卒論の序章を参考にして下さい。
3年生の最後の授業までにOutlineの大筋を固め、最新版Bibliographyを提出してください。
3年生の春休みにリサーチを進め、5 先行研究の概要、7 研究の方法の→の部分を拡充します。

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